カウンセリングを成功させるためには

今、巷には「カウンセラー」と名乗る人があふれています。ところがその能力は正直なところピンキリと言わざるを得ません。

今までのコラムでもお話ししてきた通り、本来カウンセリングには様々な療法や技法があり、それをクライエントの問題に応じて組み合わせながら行っていかなければ結果が出せません。

それにもかかわらず、長い間、日本では「カウンセリングとは話を聴くこと」と誤解されてきました。

そのため、「傾聴」のみでカウンセリングを行っているカウンセラーが多いのも実情です。

その結果、クライエントは長い間カウンセリングに通ったにもかかわらず一向に問題が解決しないばかりか、高い面接料を支払続けることになってしまうのです。

それでは、カウンセリングを成功させるためにはどうしたらよいのでしょうか。


  • 対象範囲を明確にする
  • 目標をはっきりさせる
  • 取り決めをきちんとする
  • 成功とは何か
  • 対象範囲を明確にする

    日本のカウンセリングの問題点の一つにカウンセリングの定義が曖昧であるということがあります。つまり、精神科医療の問題と、人生上の様々な悩みが区別されておらず、精神科にかかるべき人がカウンセリングに来談することも多いのが実情です。そこでカウンセリングではインテーク面接(初回面接)において、カウンセリングのベースにのる問題なのか医療機関にかかるべきかを見極める必要があります。

    ところがこの見極めをせず、本来医療機関にかかるべき問題を引き受けてしまい漫然と面接を続けてしまうカウンセラーも多いのです。

    特にメンタルヘルスの問題は注意しないといけません。鬱を訴えてきたクライエントがいた場合、例えばバセドウ病(甲状腺機能亢進症)が原因でうつ状態になることもあるのです。

    それを漫然と「鬱には認知行動療法が向いているから」などとやっていたら病気を悪化させてしまうこともあるのです。カウンセラーにはこれらを見極める知識が必要なのです。

    そのうえで、カウンセラーのアイデンティティ、つまり自分の専門を明確にすべきです。

    カウンセラーは臨床心理士や公認心理士とは扱う対象が違います。精神障害などの医療的なケアが必要な問題はカウンセリングの対象ではありません。

    目標をはっきりさせる

    次に、「目標をはっきりさせる」ことが成功の秘訣となります。

    実際にカウンセリングを始める前に「いったい何のためにカウンセリングをするのか?ここでカウンセリングを受けてどうなりたいのか?」そのような目標をはっきりさせないと何をするのかが見えてきません。その目標に向けて毎回、面接が発展していくことが重要なのです。

    今までの日本ではこのあたりが曖昧だったのです。これもカウンセリングとは話を聞いてあげればいいという誤解を生んでしまった原因の一つです。


    取り決めをきちんとする

    そして1回の面接時間や、解決までにどのくらいの期間かかるのか、費用はどれくらいかかるのか、ということについても事前に取り決めをすることが重要です。

    また、カウンセリングは医療の問題と違い「治す人と治される人」という関係性ではなく、まさに「共同作業」となります。そのため、クライエントには自分の問題を具体的に言葉で説明してもらう義務があります。自分自身も積極的に自分の問題を解決しようという気持ちが重要です。事前にクライエントにはカウンセリングに対する姿勢についても説明をします。

    このような面接に入る前の事前の取り決めを「場面構成」と言います。つまり面接の枠組みを整えることです。これができていないとクライエントは不安になってしまいますし、カウンセラーとクライエントとの会話が社交会話に堕してしまう危険性があります。


    成功とは何か

    例えば、親しい人を亡くした時、多くの人は悲嘆にくれることでしょう。これは誰しもに起こる当然の反応ですが、これが高じてうつ病になったらこれは臨床、医療レベルとなります。医療モデルでは、投薬治療などで、鬱を改善し社会適応できるレベルになれば「成功」と言えるかもしれません。しかしカウンセリングは「治る、治らない」「適応する、適応しない」という病気の問題を扱うのではなく、「今よりより良く生きるためには」「自分の能力をこの社会に生かすためには」という「人間成長」や「自己実現」の問題を扱います。

    つまり、カウンセリングの成功とは、鬱状態が軽くなったり明るくなるだけでなく、その悲しみの中に何か意味を見出し、これからの人生に役立てることができるようになることなのです。

     例えば、人の優しさにふれ、周りの人とのかかわりを見直すことができたり、限りある時間の中に生きている実感から今を大切に生きることができるようになるということです。


    本当によくなったクライエントが言う言葉に、「楽に生きられるようになった」「人と比較しないで自分らしくふるまえるようになった。」ということがあります。

    カウンセリングが成功すると、クライエントは一回りも二回りも人間的に大きくなっているのです。



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カテゴリ:コラム