悩みの解決方法~問題解決の秘訣とは?~VOL.2
前回のコラムでは、焦点化の重要性についてお話しました。
クライエントの問題を解決するためには、他にも秘訣が色々あります。
その一つにクライエントの問題を見極め、アプローチ方法を選択する、ということがあります。
実は、クライエントの問題には量的にアプローチをした方が良い問題と質的にアプローチをした方が良い問題があります。
それを明確にした上で、カウンセリングで何ができるのか、を考えていく必要があります。では、量的な問題と質的な問題とはどのようなものなのでしょうか。
量的な問題とは?
まず、量的な問題とはどのようなものなのでしょうか。
それは、観察可能な行動を測定したり、データーを集めて分析したり数量化したりすることができる問題です。たとえば人前でオドオドして喋れない緊張レベルが高い人が、どのくらい緊張しないで喋れるようになったのか、高所恐怖の人が何階まで行けるようになったのか、その時の心拍数や血圧などは数値として把握することができます。また良い行動がどのくらい増えたのかということも観察可能です。
こういった問題には認知を変える認知療法や行動面に働きかける行動療法などが向いているでしょう。相談者とカウンセラーの関係は選手とコーチに似ているかもしれません。
質的な問題とは?
しかし、相談に来られる人の問題はそういった観察可能なものばかりではありません。
例えば親子関係の問題や夫婦関係の問題などの人間関係にまつわる問題や、これからの人生をどうやって生きていったらよいか、生きていても張りがない、というミッドライフクライシスをはじめとする生き方の問題、親しい人を亡くしたというグリーフ(嘆き悲しみ)ケアなどの問題は、数量化できるものではないので、量的には対応できません。
つまり、質的な問題とは、観察やデーター化したりすることができないその人個人の独特な内的な問題です。
ではこのような問題にはどのようなアプローチが向いているのでしょうか。
ナラティブカウンセリングとは?
このような質的な問題にアプローチする方法としてナラティブなカウンセリングというものがあります。
「ナラティブ」とは物語という意味です。人はそれぞれ自分なりの人生の物語を紡いで生きています。
例えばグリーフの問題を例に挙げてみます。
「親しい人が亡くなる」とは、その物語の中の重要な登場人物が突然いなくなってしまい、その物語が破綻してしまう、ということです。それで嘆き悲しみが出てくるのです。そこでもう一度その人がその物語を書き直していくお手伝いをしていく作業が必要になってきます。
だからナラティブカウンセリングのクライエントとカウンセラーの関係は小説家と編集者みたいなものと言えるかもしれません。
このように、質的な問題に対するアプローチでは、基本はクライエントの話を聞いていくのですが、従来の「受容、共感」に徹してただ頷いたり言葉を繰り返したりするという「傾聴」と違い、話を聞きながら的確な質問をしていきます。それによって、自分の人生や過去、未来などに対してどうとらえているのか、それが本当かどうかなど、その人が内に作っている物語について考え直していくのです。その過程でまた新たな考えや信念が形作られ、望ましい行動につながっていきます。
つまり、その人の今まで持ってきた人生の物語を書き換えられれば、これまでと違った人生を生きていくことが可能になるのです。
ただ、この質的なアプローチは、はっきりとした「これ」という技法がないだけに、カウンセラーの技量が試されます。
「人に応じて」が重要
また、同じ問題を抱えていたとしても、目の前にいるクライエントに応じて、対応の仕方を考えていくことが必要です。
たとえば、量的アプローチが向いている問題でも、非常に自我が脆弱で落ち込んでいるようなクライエントに対して「認知(受け取り方)を変えて行動しなさい」というようなドライな対応は一般的には向いていません。
そこで実際のカウンセリングでは、クライエントの年齢や動機づけ、理解力、抱えている問題、そして今どんな状況なのかに応じて戦略をたてさまざまな療法を組み合わせてやっていくのです。
量的、質的なアプローチのカウンセリングにしても○○療法だけで解決するということはありません。
問題を抱え悩んでいる人に寄り添い、その人に応じてオーダーメイドでどういう筋道でどのように行っていくのかをクライエントに話し、同意を得てからカウンセリングが始まっていくのです。
次回は「カウンセリングにおける失敗と成功」についてお話します。
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