毒親との付き合い方
「親と一緒にいると苦しくなる」
「大人になった今も親の顔色を気にしてしまう」
「親を疎ましく思うことに罪悪感がある」こんな方がいらっしゃいます。
最近よく「毒親」という言葉を聞くようになりました。「毒親」とは「子供の毒になる親」のことです。本来は無償の愛を注いでくれるはずの親から愛情を得られず、苦しむ子供の存在がクローズアップされるようになってきました。
このような毒親とはどのように付き合えば良いのでしょうか。
- 毒親の特徴
- なぜ毒親になってしまうのか
- 毒親に育てられるとどうなるのか
- どうしたらよいのか
毒親の特徴
毒親にはどのような特徴があるのでしょうか
・過干渉で支配的である
子供を一人の別人格として認めず、自分の思い通りにしようとします。例えばどのような友達と付き合うか、どんな服を着たいか、何が食べたいか、など子供の意見を聞かずに何でも親が決めてしまい子供の意思を尊重しないという特徴があります。時には暴力や無視、脅しなどという手段を使ってでも子供を自分の思い通りにコントロールしようとします。
・子供の感情に無関心で寄り添わない
子供は時にはしゃいだり、大泣きしたり、大笑いしたり、感受性が豊かでそれを全身で表現します。しかし毒親はそのような感情に共感せず無視したり、抑えるように叱責したりする場合があります。すると子供は自然な感情を持つことを抑えたり否定するようになってしまいます。
・過剰な期待と条件つきの愛情
「教育虐待」という言葉があります。以前、母親から医学部に合格することを強要され9浪した娘が母親を殺害してしまったという事件がありました。このように親から過剰な期待を掛けられて親が望む進路や生き方しか認めない、ということがあります。そしてありのままを認めてくれるのではなく、「良い成績を取った」「良い学校に合格した」などと親の望んだ条件付きでしか愛情を与えない、という特徴があります。
・過放任
過干渉とは逆に、親が自分のことで手一杯で子供にまったく無関心という場合もあります。何をしても褒められも叱られもしないという状態です。人間には自分を価値ある存在だと認めて欲しいという「承認欲求」がありますが、これは「親に認めてもらいたい」という気持ちを出発点とします。ところが過放任となると承認欲求が満たされません。この結果子供は慢性的な寂しさを抱えることになります。
なぜ毒親になってしまうのか
ではなぜ毒親になってしまうのでしょうか。それにはいくつかの理由があります。
・コンプレックスの投影
親自身がコンプレックスを抱えておりそれが解消できていない、ということがあります。
人間には「投影」という心理があり、自分の心の中にある感情や欲求を、他者の中に映してしまうということがあります。親自身が自分のコンプレックスを受け入れることができないため、子供にそれを投影してしまい、子供を使って自分のコンプレックスを解消しようとするのです。
・認知の歪み
「子供は親に従うべき」「子供は親孝行して当たり前」「自分の言うとおりにしていれば子供は幸せになれる」などという認知があり、その信念をかたくなに守ろうとします。
・自他の区別がついていない
親自身が精神的に自立できておらず、子供を自分の所有物のように感じ、本来は別人格である子供との境界線があいまいになっていることがあります。
・世代間連鎖
そもそも、親自身が毒親に育てられ、子供への愛情の示し方がわからない、という場合があります。
毒親に育てられるとどうなるのか
このような毒親の元で育った場合、様々な心理的な影響が出ることがあります。
・自己肯定感の低下
自分自身の選択を尊重される経験が乏しいので、自分の考えや行動に自信が持てず常に人の顔色を気にしてしまうことがあります。その結果、疲れてうつ状態になってしまうこともあります。また、自分自身を大切にすることができず自暴自棄になって刹那的な行動を取りやすくなります。
・失感情
自分の感情を抑圧して親に合わせてきた結果、もはや自分自身が何を感じているのかがわからなくなってしまうことがあります。これを失感情と言います。失感情になるとやがてSOSの信号として様々な身体症状が現れ心身症になることがあります。
・同じようなパターンを繰り返す
親から逃れたい一心で、逃げるようにパートナーと結びついた結果、そのパートナーも親と同じような支配的なタイプだった、ということがあります。
これは無意識のうちに幼少期にできた心の傷を同じパターンを繰り返すことによって修復したいという気持ちがあるからなのです。これを「反復強迫」と言います。ところが修復することができないため、その関係が破綻します。するとまた同じような人間関係のパターンを繰り返してしまうのです。
どうしたらよいのか
では、どうしたら毒親の支配から逃れることができるのでしょうか。
・気づく
親から常に支配的な養育を受けていると、一種の洗脳状態になっていることが殆どです。特に子供の頃は家庭の中の異常性にはなかなか気づくことができません。しかし、大人になるにつれて世界が広がると様々な違和感に気づくことができます。その違和感に蓋をせず、色々な情報を集めたり、周りの広い世界を見渡してみることです。
・親の教えを取捨選択すること
その時に、親を悪く感じる自分に罪悪感を持つことがあるかと思います。しかし、親のすべてが悪いというわけではないはずです。親の教えの中には、良いところもあれば悪いところもあるのです。大切なのは自分にとって必要なものと不必要なものを取捨選択することです。そして必要な教えは大切に持っていることが重要です。
また、「親孝行するべきである」という風潮が日本には昔からありますが、そうできない親子関係だってあるのです。そうできない、と感じている自分を大切にして良いのです。
・諦める
親からの様々な影響に気づく中で、親への憎しみや怒りの感情が溢れてくることがあります。
そして何とか親に謝罪させたい、親に自分の今までの気持ちをわからせたい、という考えにとらわれることがあります。
しかし、残念ながら「過去と相手」は変えられないのです。親は自分の強い信念に従って良かれと思ってやっていることが殆どです。親を自分の思い通りに動かすことに執着するのではなく、親から解放された今、自分の人生をどう選択するかにエネルギーを注ぐ方が建設的です。
・親を理解すること
親も一人の人間として、一度きりの人生を一生懸命生きています。親自身も自分の親から欲しいものをもらえず生きてきたのかもしれません。子供の立場から親を見るのではなく、一人の人間として親を客観的に見る視点に立ってみることです。
・自分の人生を歩むこと
親や周りに向いていた意識を、自分自身の内側に向けてみることが重要です。
「私は今、どう感じているのか」「私はどうしたいのか」というように自分の感情や欲求を優先して物事を選択することです。今までのパターンを修正するためには少し時間はかかりますが、日々、自分の感情や欲求を見つめるトレーニングをすることが重要です。そして親とは違う自分自身の価値観や世界を作り上げていくことです。
・カウンセリングを受ける、勉強する
親に対しては愛着の気持ちと同時にそれを満たしてくれないという憎しみの気持ちが葛藤し、罪悪感を持ったり複雑な感情になることが少なくありません。
親に対する違和感に気づいたものの、自分自身では心の整理が難しいという場合は、カウンセリングを受けることをお勧めします。
また、心の発達プロセスや、脚本分析などの分析的アプローチを学ぶことも有効です。
人は皆、親からの影響を多大に受けながら生きています。
でも大切なのは、親に従うことでも親を捨てることでもなく、自分にとって必要なこと不必要なことを見極め、自分自身の人生を自分の意志で生きることなのです。
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