女性のミッドライフクライシス
40~50代になって、今まで着ていた洋服が似合わなくなったり、物覚えが悪くなったり、あちこち痛くなったり・・・こんな変化を感じていませんか?
そしてそんな自分にガッカリしたり不安になったり、イライラしたりということはないでしょうか?
このような中年期の心理状態を「ミッドライフクライシス(中年期の危機)」と言います。
ミッドライフクライシスは、中年期にある人であれば誰にでも起こりえる心理状態ですが、こじらせてしまうと重篤なうつ状態になってしまったりします。
特に女性にとっては、この時期は更年期による体の変化、仕事の責任や役割の変化、夫婦関係や親子関係の変化、親の介護の問題など、様々な人生の場面で変化の多いまさに大転換期にあたります。
ではどうしたら、このミッドライフクライシスを乗り切り素敵に歳を重ねていくことができるのでしょうか。
ミッドライフクライシスとは
ミッドライフクライシスとは、「中年期に訪れるアイデンティティの揺らぎ」なのです。アイデンティティとは、簡単に言うと「私らしさ」ということです。
心理学者のE・H・エリクソンはこのアイデンティティの獲得を青年期の課題としました。
私たちは青年期からこれまでの人生の中で「私はこういう人間だ」という自己像や「こうすればうまくいく」というような自分なりのやり方で「私らしさ」を作ってきたのです。
そしてそのアイデンティティを元に仕事をしたり人間関係を築いてきたはずです。
ところが、中年期になると、今までのやり方がなんとなく通じなくなってきたことを感じるわけです。それによって「自分は本当にこれでよかったんだろうか」という葛藤や「これからどう生きていけばよいのか」という不安を感じやすい不安定な心理状態に陥るのです。
だからこの時期はもう一度、それまでに作ってきたアイデンティティを再構築する必要があるのです。
ミッドライフクライシスの症状
ではどういう症状があるのでしょうか。
①精神症状
不安、焦燥感、気持ちの落ち込み、集中力の低下、など
②身体症状
疲れやすい、胸のあたりがザワザワする、動悸、のぼせや冷え
などが代表的な症状です。
ミッドライフクライシスの原因
では何が原因でしょうか。
・将来に対する不安
・若さや健康が失われていく焦り
・自分とは違う生き方をしている人への羨望、劣等感
・こういう選択をすれば良かった、もう取り戻せない、という失望や後悔
・誰にも必要とされていないような虚無感や孤独感、抑うつ感情
ミッドライフクライシスは上記のことなどが原因となり、その結果、うつ状態になったり、アルコール依存症になったり、性的に逸脱したり、人間関係がおかしくなったりする場合もあります。
なぜ中年期にこのような問題が起きやすいのか、もう少し詳しく見てみると、
①現代女性の特徴
a)ライフサイクルの変化
現代女性は、寿命が延びたことや育児にかかる時間が短縮されたことなどでライフサイクルが大幅に変化しました。特に子育てにかかる時間が短縮されたとこで、特に中年期以降の女性はここから先、どう生きようかという新たな課題が生まれました。
b)多様な選択肢
また、女性の生き方は、男性に比べると選択肢が多くて多様です。
結婚、出産、仕事の選択が複雑に絡み合い、どのライフコースを選択してもその中には、自分の生き方を問うような色々な危機やストレスが隠れているわけです。それを迷いながら常に選択しなければならないわけです。
そしてどのライフコースを選択したとしても、中年期あたりになると、自分には他の生き方があったのではないか、本当にこれでよかったんだろうかなどと考えて後悔したり、これからどうすればいいんだろうか、と不安になったりするのです。
c)「重要な他者」との関係の変化
例えば、子供は自立をして自分を必要としなくなっていきます。「空の巣症候群」といわれますが、子供が手が離れたことをきっかけに自分の存在価値を見失ってしまってうつ状態になってしまうということがよくあります。
また、夫婦関係も変化します。長い間、子供を中心として「パパ」と「ママ」の役割を演じてきたのに、今度はまた「男」と「女」という二人の関係に戻るわけです。子供が抜けてしまうと、何とか保たれていた家族力学が崩れて、急に男と女として向き合わなくてはいけなくなってしまい、戸惑いを感じたり居心地の悪さを感じたりしてしまうこともあります。
また、中年期になると親の死に遭遇したり、介護を必要とする年老いた親をひきとることになることも少なくありません。
このような経験すると、自分もそんなに残りがあるわけではないんだ、ということを自覚して焦りや不安が大きくなることもあります。
②身体的変化
そしてミッドライフクライシスのきっかけとして大きなものに女性の場合は更年期障害があります。
更年期とは、「閉経を迎える時期の前後5年くらいの期間」のことを指します。
この時期は卵巣の機能が衰え始め、女性ホルモンの分泌量が急激に減少することによって「体がほてる」「大量の汗をかく」「手足の冷え」「頭痛」「めまい」「関節の痛み」「肩こり、腰痛」などという身体的な症状だけでなく、「イライラする」「不安になる」などの心理的な症状が表れたりします。また、ホルモンバランスの乱れにより鬱が引き起こされたりもします。
ミッドライフクライシスを乗り越えるコツ
ではどうやってミッドライフクライシスを乗り切れば良いのでしょうか。
①心からやりたいことをやる
例えば何か新しいことを始める時に、「これをやれば誰かに認めてもらえる」とか「これをやれば報酬が得られる」というような外部からの評価を意識したものではなく、自分の中から出てくる強い興味、関心や探求心を元にした内発的動機付けによる行動が重要なのです。
「他の人がどう思おうと関係ないし、報酬に結びつくかどうかも関係ない、自分がやりたいからやる」という自分の心の声に従った行動が重要です。
②求める立場から与える立場へまわる
人生の前半は「他者から認められたい」という承認欲求を持つのは当然であり、そのために頑張ってきたという人も多いのではないかと思います。
しかし、中年期には今度は自分が他者を認め、育てる立場へ回ることが重要です。つまり自分が求める側から与える側へ立場をシフトすることです。
そして、家庭では子供だったり、会社では後輩だったり自分よりも若い世代の人に技術や文化や伝統などを受け渡していくことです。
これを心理学では「生殖性」言い、中年期の大切な課題としています。
そして新たな役割に喜びを感じられることが重要です。
③人間関係を見直す
女性は男性に比べて協調性を重んじるという性質があるので、周りとのつながりを大切にしてきた人が多いのではないかと思います。
でも、中年期になるとそれぞれライフコースが分かれていっており、心から気兼ねなく付き合える友人ばかりではなくなっているのが自然の流れなのです。
人間関係を維持していくためには、時間とお金とエネルギーが必要です。無理をして人間関係を維持するのではなく、限りのある時間とお金とエネルギーを今、心から大切だと思う人に費やすことです。
また、人間関係に依存せず、孤独を楽しむことです。
中年期の女性は、子供は巣立っていき、夫とも関係が変わっていき、深く付き合える友達も限られてきます。その時に、寂しさの穴埋めに誰かにすがるのではなく、もう一度、「私は何が好きなのか」「何を心地よいと感じるのか」と自分自身と対話しながら一人の時間を豊かに過ごすことが重要です。
④ロールモデルを見つける
ロールモデルとは、「この人みたいになりたい」という自分の行動や考え方などお手本になる人のことです。
少し上の世代の人の話を聞いてみたり、身近な人だけではなく有名人なども含めてこういう生き方は素敵だな、というところを探して参考にすることです。
ミッドライフクライシスを乗り切るための最大のポイントは「ソフトランディング」することです。
ソフトランディングというのは緩やかに下降したり少しずつ減速して着地することです。
人生を山登りに例えると、中年期は山頂を過ぎて下山が始まったところです。
まずはちょっと下ってきたな、と思ったら今までどうやって上ってきたのだろう、と山頂付近で休憩することです。そして休憩しながら今まで来た道を振り返ってみることです。
それが終わったら景色を楽しみながら一歩ずつゆっくりゆっくり降りてくることなのです。
ミッドライフクライシスというのは、山頂を過ぎて少し下ったところにある休憩ポイントだと思います。この休憩ポイントでどうやってこれからゆっくり降りていけばよいか今一度計画を立てることが大切なのです。
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「寂しい人の心理」