中年期の自殺~ミッドライフクライシスとは?対処法は?~
先日、俳優の渡辺裕之さん、お笑い芸人の上島竜兵さんが相次いで亡くなりました。
共に自らの意思で死を選び、60代であったという共通点があります。
日本の自殺者は年間3万人ほどですが、40~60代がその約半数を占めています。
これはなぜなのでしょうか。また自分の心に暗い影か忍び寄ってきたとき、どのように対処すればよいのでしょうか。
- ①中年期の心理
- ②中年期の自殺の原因
- ③ミッドライフクライシスへの対処法
①中年期の心理
心理学者のユングは人の人生を「少年期」「成人期」「中年期」「老年期」の4つの時期に分けました。そしてその人生の流れを一日の日の出から日没までになぞらえ、「少年期」と「成人期」を人生の午前、「中年期」と「老人期」を人生の午後と考えました。
つまり、「青年期」から「中年期」への切り替わりは一日で言うと正午に値し、それまでの午前中は、自分の能力、体力など、拡大路線にあったものが、急に午後にはいると縮小路線になることを感じざるを得なくなるのです。
この「人生の正午」に値する「中年期の転換期」がユングは人生にとって最も危機の時期であると言いました。
②中年期の自殺の原因
ふと気づいたら白髪が増えていた、ついこの前までは何気なく上っていた階段がしんどく感じるようになってきた、人の名前がなかなか出てこない・・・40代以降、このような変化を感じる人が多いのではないでしょうか。
つまりこの時期に女性であれば更年期に入り心身の変化を感じたり、男性であれば会社でのポジションが変わったり体力に限界を感じたり、今まで通りにいかなくなったことを感じるわけです。ところが、そのような自分の変化をなかなか受け入れることができず、今後の生き方に迷いを生じてしまったり、自分の人生を振り返りやってこなかったことやできなかったことに後悔の念を抱き、抑うつ状態になってしまうことがあるのです。
このような中年期の惑いの状態を「ミッドライフクライシス」と言います。
中年期の自殺者が多い原因の一つにこの「ミッドライフクライシス」があるのではないかと思われます。
今まで精力的に人生の午前を駆け上がってきた人ほど、人生の午後に入り急に思うようにいかなくなってしまうと、そのギャップに戸惑い、変化を受け入れられずうつ状態になりやすく、それがこの年代の自殺者の多さと関係しているのではないかと思われます。
③ミッドライフクライシスへの対処法
ミッドライフクライシスへの対処法としては
(1)人生を俯瞰して見る
わき目もふらずに走ってきた午前中から午後に入り日没に向かっていく、というライフサイクルを俯瞰して見てみることによって、自分の来た道、これからの道をどうソフトランディングしていくか意識してみると良いかと思います。
(2)同年代の人と気持ちを共有する
同年代にあっても周りはまだまだ精力的に見えて、「こんな感情は自分だけだ」と孤独感を感じてしまうことがあります。でも実は多かれ少なかれ皆、同じような気持ちを抱えていることでしょう。気持ちを打ち明け悩みを共有することが重要です。
(3)役割を変化させる
今までは自分が中心となって仕事を進めてきた、という人も思い通りにいかなくなった時に、ただ落ち込みその仕事に固執するのではなく、今の自分だからこそできる、他の役割に目を向けてみることです。
例えば、今度は自分の役割を「後進を育てること」などに変化させることです。
今まで培ってきたノウハウを生かして若い世代に伝承していくことが次のステージの役割になることもあります。
ネットを見ていると、「あの芸能人は最近劣化した」などという言葉を見かけることがありますが、人間は生きている限り、様々な年齢的な変化を経験せざるを得ません。
ところが特に日本では、若くて精力的なことばかりに価値が置かれている風潮があるような気がします。でも、中年期には経験を経てきたからこその知恵や深み、奥行きが備わっているはずです。
山登りに例えると、中年期は山からの下山になります。山に上る時は頂上を目指すことばかり考え、周りを見渡す余裕がなかったかもしれません。でも、頂上を過ぎ下山する時には心の余裕をもって、様々な景色を味わいゆっくりと楽しみながら降りることができるのです。
このように中年期には若い頃とは違うゆとりや輝きがあるはずなのです。
失われたものばかりに注目するのではなく、時間をかけて育んできたもの、得てきたものに注目することが重要です。
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