対人恐怖症の克服法は?

「人と接するときに過剰に緊張してしまう」

「人と目が合わせられない」

「相手を不快にさせているような気がする」

このような気持ちが強く、実際に赤面、異常発汗、手や声の震え、表情のこわばりなど様々な身体症状を持つ人がいます。このような症状は「対人恐怖」と呼ばれるものです。

「対人恐怖」というのは相手が怖いのではなく、「相手の瞳に自分がどう映っているのか」ということを人一倍気にして恐怖に感じるのです。

ではこのような対人恐怖の原因はどこにあるのでしょうか?

また、どうしたら良いのでしょうか?

社交不安障害と対人恐怖症

DSM-5(アメリカ精神医学会診断マニュアル)では対人恐怖症は「社交不安障害」と分類されています。

「社交不安障害」というのは、人の注視を浴びるような状況に対して恐怖感を抱き、うまく振る舞えなくて恥をかいたり、拒絶されたり、他人に迷惑をかけたりしてマイナスの評価をされることを過度に恐れる疾患です。そのため、人との接触を避けたり、日常生活に困難をきたすことがあります。

ただ、「文化依存症候群」といって、日本の対人恐怖症は日本特有の文化に影響されているため、社交不安障害の分類より広範にわたる概念とされています。

対人恐怖の分類

対人恐怖には様々なタイプがあります。

①赤面恐怖

 緊張場面で自分の顔が赤くなったり、自分の表情がおかしいと思われるのではないか

②視線恐怖

 自分の視線が相手を不快にさせているのではないか

③醜形恐怖

 自分の醜さが周りに不快に思われているのではないか

④自己臭恐怖

 自分の匂いが周りに不快に思われているのではないか

などと、自分には重大な欠点があり、その欠点の為に相手を不快にさせているのではないか、

と恐れるのです。

対人恐怖の原因

多くの場合は、13~16歳頃に始まり、18~22歳頃、その症状がピークになる人が多いと言われています。つまり、思春期に起こりやすい問題と言えます。

なぜなら、思春期になると、それまでは自分にしか向かなかった意識が他人に向き、他人の目に映った自分の姿を意識するようになるからです。

また、対人恐怖は日本人に多くみられるという特徴があります。

これは日本の文化と関係があります。日本人は農耕民族として村を形成し、村の人と協力して生きてきました。村の掟からはずれることをことさら恐れ、相手を配慮する国民性があり、個人というのは家を代表するものとして、「恥」や相手との「間」を特に気にする文化があるからなのです。

よって、対人恐怖の症状は身内やまったく見ず知らずの人には起こりにくく、「半見知り」の人に起こりやすいと言われます。

このような文化をベースとして、特に家庭の中で「こうあらねばならない」という厳しい躾を受けてきた人の中には、「人前で失敗してはいけない」「人に不快な思いをさせてはいけない」という意識が強くなり対人恐怖的な症状を持つ人がいます。

対人恐怖の人は、実は人一倍、寂しがり屋で人を求めているのです。ところが相手からの反応をことさら意識してしまうため、人と接することを恐れてしまうのです。

このような心理は多かれ少なかれ誰にでもあるものですが、対人恐怖の人は「よりよくやりたい」というエネルギーが強いために、自分の欠点と考える部分にとらわれ、身動きができなくなってしまいます。

対人恐怖のメカニズム

人は誰でも人と接する時に緊張したり不安を感じたりします。そして緊張や不安を感じれば、人間は動物的な自然な反応としてアドレナリンを放出し、血圧を上げ、「戦うか、逃げるか」の姿勢を取ろうとします。この自然な反応が動悸や赤面や発汗などの症状なのです。ところが、対人恐怖の人はこの自然な反応を「恥ずかしいこと」「いけないこと」と捉えがちです。だから何とかそれを静めなければならない、と努力してしまいます。

ところが、心の問題は努力すればするほど悪化するという特徴があります。眠れない時に眠ろうと努力すると余計意識してしまい眠れないのと同じです。

また、このような状態に「またなってしまったらどうしよう」と実際に事が起こる前から不安になります。これを「予期不安」と言います。予期不安を感じているために、常に緊張状態が続き、本来誰でもがもつ通常の不安や緊張をことさら大きくしてしまうのです。

対人恐怖の克服法は?

今みてきたように、対人恐怖の人は自分の不安や緊張、身体の症状にとらわれ、それを何とかしよう努力してしまい(はからい)悪循環にはまってしまっています。

よって対人恐怖を克服するためには、この「とらわれ」と「はからい」から脱却することが重要です。

そして「こうあらねばならない」という受け取り方を見直しながら、誰でもが持っている自然な反応をことさら意識せず、受け入れていくことがポイントとなります。

カウンセリングを行う場合はリラクセーション、認知行動療法、感情モニタリング、森田療法などが有効です。

対人恐怖の人は、「生」のエネルギーが強いと言われます。成功したい、よりよく生きたいという気持ちが強いのです。これはとても素晴らしいことです。そのエネルギーを生かしながらその方向を建設的に変えていくことが重要なのです。

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カテゴリ:コラム