グリーフケアの方法とは?

大切な人を失った悲しみから立ち直れない・・・

あの時、ああしていれば、と自分を責めてしまう・・・

こんなことはありませんか?

愛する人や物を亡くした心理状態を「悲哀」といい、この悲哀の心理過程で経験される落胆や絶望感を「グリーフ (Grif 悲嘆)」と呼びます。

これらをケアすることをグリーフケアといいます。

実は日本でグリーフケアが意識されだしたのはごく最近のことです。

病院で亡くなる人が多くなったり、核家族化などでグリーフ体験を皆で共有する機会が減り、大切な人を亡くした時どうしたらよいかわからない、またどう支えたらよいのかわからない、という人が多くなってきました。

そこでグリーフケアが必要になってきました。 今回はこのグリーフケアについて解説します。

  • 1.グリーフケアの原因と反応
  • 2.立ち直るためのプロセス
  • 3.遺された人が取り組むべき課題
  • 4.グリーフケアって何をするの?
  • 1.グリーフケアの原因と反応

    大切なものを失い心理的なショックを受けることを喪失体験と言います。

    対象を「喪失」するとは自分にとって大切なものを失うということです。

    「大切」というのはすごく主観的なことです。

    例えば失くしたものが「景品でもらったもの」であれば、喪失とは言わないかもしれませんが、それが「母の形見」だったらどうでしょうか。

    つまり喪失とは「感情的に投資したものを失うこと」をいいます。

    例えば、

    ・流産や死産を含む大切な人の死

    ・離婚などパートナーの喪失

    ・ペットの死

    ・認知症で愛する人が別人のように変わってしまった。

     などということも含まれます。

    喪失は感情面や精神面だけでなく、実際にはさまざまな領域で遺された人に影響を与えます。

    ①心理的影響

    ・感情:悲しみ、怒り、罪悪感、ショック、思慕、嫉妬…etc

    ・認知:信じられない、集中できない、現実とは思えない、霧がかかったよう、故人を感じる…etc

    ・行動:涙が止まらない、引きこもる、故人を探す、落ち着かない、過剰活動、睡眠障害…etc

    ②肉体的影響

    頭痛、めまい、疲労、息切れ、震え,胃痛、肩こり、口渇、体重の減少、血圧の上昇…etc

    ③社会的影響(二次的喪失)

     a)役割の変化

    家庭内での役割の変化

     ・伴侶がいないので何もしてあげられないと言う気持ち

    ・誰の役にも立っていないと言う気持ち

    ・母を亡くした子へのケアのため母親役もこなす必要がある。

                               など

    b)社会的立場の変化

    ・「~さんの奥さん」じゃなくなる

                    など

     c)遺族間の軋轢

    ・家庭内のバランスが崩れ、本来支え合うはずの家族がバラバラになる

    ・葬儀の在り方や遺産相続でのトラブル

                         など

    d)環境の変化

    ・1人住まいになった。

    ・夫の死による収入の激減

    ・故人の行っていた家庭内の役割を果たすため様々なスキルを習得する必要がある

                                      など

    またこれら以外にも

    ・人はなぜ生まれて死んでいくのか?

    ・なぜ自分にだけこういうことが起きたのか?

    ・死んだ人は何処に行くのか?

    ・生きるとはどういうことか?

    こういったことを深く考え自問自答することもあります。

    また、過度な悲嘆は自律神経系と内分泌系に影響を及ぼし、健康被害が出やすいと言われます。

    パークスとワイスという学者が病気で治療中の患者の死別経験を調べたところ、喪失体

    験が重大な疾患や死を招く危険があるということが分かったそうです。 

    だいたい死別後、半年以内で死因は心筋梗塞などの心不全など循環器系が多かったそうです。 

    2.立ち直るためのプロセス

    ではどうしたらグリーフ(悲嘆)反応から立ち直ることができるのでしょうか。

    グリーフから立ち直るには、ある程度時間がかかり、また個人差があります。

    また行きつ戻りつしながら徐々に回復していきます。

    それでは立ち直るためのプロセスはどのように進んでいくのでしょうか?

    色々な学者の説がありますが、多くの場合は、ショックで感情が麻痺したり、茫然自失になったりしたあと、失った事実を認めていく。その間に怒りや悲しみ、そして絶望感のあまり引きこもったりしながら、徐々に喪失を受容し、新しい希望を求めながら立ち直り再生の道を歩んでいくようです。

    大切なことは誰もが遭遇する悲しい出来事について、ただ悲しい出来事とみなすのではなく、それを乗り越えることで人間的に成長していくということです。

    3.遺された人が取り組むべき課題

     

    ①喪失の現実を受け入れること

    これは頭で理性的にわかるだけではなく感情的にも受け入れるようになることが大切です。

    ②悲嘆の痛みを経験して消化していくこと

    心に痛みを感じないのは不可能です。この時に精神薬やお酒などで紛らわせたり、新しい恋愛関係をもつことで逃避したりすることなどもあります。また、悲嘆の痛みを心から排除しようとして鬱に陥ることもあります。

    大切なことは辛いかもしれないが悲嘆の痛みを避けずにその苦痛を感じ尽くすことが重要です。

    ③グリーフワークをすること

    静かに自分の気持ちを見つめたり、親しい人に気持ちを話すことです。

    また感情を再びよみがえらせて追体験していくことも重要な作業です。

    ある時は故人の写真を見たり、思い出にひたり悲しんだりしながらグリーフワークをしていく。

    家事や仕事などに集中して一時、悲しみから離れることも時に必要です。

    こうやって心理過程を交互に繰り返しながら徐々に消化されていくのが望ましいでしょう。

                                   

    4.グリーフケアって何をするの?

    ①心にあることを言葉として表現する。

    カウンセラーに故人のこと、死に至る過程、自分の気持ちなどを率直に話します。

    それに対してカウンセラーは気持ちを受け止め、共感していきます。

    そうして徐々に気持ちが落ち着いてきて状況などを少しづつ見れるようになってきたら

    ②多面的に見てみる

     例えば、誰(何)に対してどうしたかったのか、という意識や対象を明確にしたりしていきます。そうやって亡くなった人のプロセスを語る中で一歩離れて客観的に見てみる作業をしていきます。 

    言いたいことが言えなかった後悔などもよくあることですが、そういう時には空椅子技法などという、今ここで言えなかったことを再現してみるというやり方もあります。

    ③思い出を語る

    思い出を語ることでカタルシス効果が生まれます。カタルシスとは心の浄化作用のことです。

    人は誰でも自分の物語を作って生きています。その物語の文脈にしたがって物事をとらえ、感じ、行動しています。

    そうすると大切な人がいなくなったということは、自分の物語の中の大切な位置を占めていた登場人物が突然いなくなることになります。だからこの物語は破綻します。

    そこでこの物語のストーリーを書き換えなければならなくなります。

    グリーフケアを行う際に、今の現実を受け入れて、前向きに意味づけることができるようにカウンセラーと共に物語を書き直していく作業をナラティブ・カウンセリングといいます。ナラティブとは「物語」という意味です。

    グリーフケアのカウンセリングでは認知行動療法などのように認知を修正したり行動を起こすようなことはせずに、各人のもつ人生の物語を重視して辛い体験を他者に語ることで自分を納得させ、同時に他者にも理解してもらいその喪失体験に意味を見出していく、そのプロセスで喪失との折り合いをつけていくということが重要になります。

    カウンセラーは対話を通じて自分で新しいストーリーを見出すことをお手伝いする訳です。

    これがうまくいきますと悲嘆反応がなくなるだけではなく、その人の人生観や価値観まで変わってくるのです。

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